介護の現場には、日々の工夫や気づきがたくさんあります。けれど、その多くは施設や病院、家庭の中だけで終わってしまい、社会に届くことはありません。私はこの「閉じられた知恵」に、ずっともったいなさと限界を感じてきました。
この記事では、介護の経験や知識をどう活かしていけるのか、そして「一人で抱え込まない介護」を実現するために必要な視点について考えてみたいと思います。
なぜ介護の知識は“現場の中”で終わってしまうのか
介護の仕事をしていると、毎日のように新しい工夫や学びがあります。たとえば、利用者さんが少しでも楽に寝返りできるようにする体位交換の工夫。認知症の方が落ち着いて過ごせるようになる声かけの仕方。夜勤のときにミスを防ぐための動き方。こうした知識や技術は、確かに現場では役立ちます。
しかし、その多くは施設や病院という“壁の中”にとどまり、外に出ることはありません。病院で学んだ急変対応の判断も、施設で見つけた生活リハビリの工夫も、家庭で家族が必死に編み出した食事の工夫も、その場で終わってしまうのです。記録に残ったとしても、院内や施設内の職員が読むだけで、別の現場や社会に広がることは滅多にありません。
私自身も現場で働く中で、「これを知っていれば他の人も助かるのに」と思う瞬間が何度もありました。けれど、その声を外に届ける仕組みがなく、日々の忙しさの中で消えていってしまうのです。
介護の知恵や工夫は本来、社会全体の財産になるはずです。それが閉じられた空間の中だけで循環し、社会に届かないまま消えていく――この現実に、私はずっともったいなさと限界を感じてきました。
経験を「資産」として残すという発想
介護の現場で積み重ねてきた知識や工夫は、そのまま流してしまえば一瞬で消えてしまいます。けれども「資産」として残しておけば、働いていない時間にも価値を生み続けることができます。実際に資産になり得るものは、身近な体験や小さな工夫の中にたくさんあります。
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日常の工夫
夜勤をどう乗り切ったかの小さな工夫
利用者さんとの会話の中で心がほどけた一言
記録業務を少し楽にしたやり方
家族への説明でうまく伝わった工夫 -
ケアの工夫
認知症の方が落ち着く声かけの順番やトーン
車椅子移乗のときに身体への負担を減らすコツ
入浴介助で安心してもらえる説明の仕方や手順
食事介助のときにむせを防ぐ工夫 -
働き方の工夫
夜勤明けに体調を崩さないための睡眠リズムの整え方
短時間でできるストレス解消法やリフレッシュ法
チーム内で伝達漏れを防ぐためのメモや声かけの習慣
忙しいときに優先順位をつける考え方 -
家族・利用者対応
家族に「状態の変化」を理解してもらいやすい説明の例え方
ご利用者本人の不安を和らげる小さな一言
クレームになりそうな場面を落ち着けた対応例 -
自己ケア・メンタル面
メンタルが落ちたときの「気持ちの切り替え方法」
仕事で落ち込んだ日の立ち直りルーティン
長く続けるために自分なりに守っている「小さな約束」
こうした経験や工夫を、記事やチェックリスト、短い動画や音声などの形にして残しておけば、同じ悩みを抱える仲間や家族にとって大きな助けになります。そして何より、自分自身が数年後に振り返って「この方法が役立った」と確認できる心の支えにもなるのです。
介護の知識を活かす可能性
介護の現場で積み重ねられた知恵は、本来なら社会全体にとって価値あるものです。けれども、これまでは施設や病院、あるいは家庭の中で完結してしまい、外に届くことがありませんでした。では、それを外に出し「活かす」とどうなるのでしょうか。
まず、同じ介護職の仲間にとっては大きな力になります。自分が夜勤で悩んだときに、誰かが「こうすれば少し楽になる」と残してくれていたら、心が救われる人は多いはずです。現場で同じような壁にぶつかる人にとって、過去の経験は「未来の支え」になります。
さらに大切なのは、知識を情報として共有できるという点です。記事やチェックリスト、短い動画などの形にすれば、それを見た人が「今日から使ってみよう」と思える具体的な手がかりになります。個人の頭の中や現場だけに閉じ込めていたものを外に出すことで、同じ悩みを抱える介護士や家族がすぐに使える“生きた知識”へと変わります。
家族介護をしている人にとっても有益です。専門職でなければ知り得ないケアの工夫や声かけの方法が共有されるだけで、家庭での介護がずっと楽になることがあります。「自分たちだけで抱え込まなくてもいい」と思えることは、精神的な安心にもつながります。
さらに視点を広げると、介護の知恵は社会全体に波及します。記録の工夫は他の医療・福祉現場でも活かせるかもしれません。メンタルケアの工夫は介護以外の職種にも役立ちます。つまり、介護の現場で培われた知識や経験は、介護という枠を超えて広い分野で応用できる可能性を持っているのです。
これまで閉じられてきた知識を外に出すことで、社会の資源は確実に豊かになります。一人の工夫が、別の誰かを助け、そのまた先の人につながっていく。そうした循環こそが、介護の知恵を“活かす”ということなのだと私は思います
一人の経験を“資産”に変え、社会とつながり広げる力
介護の仕事は、その人の体力や時間を差し出して成り立つ面が大きいです。しかし、それだけでは「働いた分しか価値が残らない」という限界に直面します。だからこそ、**「経験を資産に変える」**という発想が大切になります。
資産に変えるとは、単なる記録や思い出として残すのではなく、他の人が使える形にして共有することです。夜勤をどう乗り切ったかの工夫、認知症の方に安心してもらえる声かけ、家族への説明の仕方――これらは現場で一度役立ったら終わり、ではなく、記事・チェックリスト・動画などにすれば他の人も活用できます。自分の経験が「使える知識」として形を持ち続けるのです。
さらに、この知識は社会とのつながりを生みます。同じ悩みを抱える介護士に届けば共感と安心になり、家族介護をしている人に届けば実践的な助けになります。地域の支援や異業種の取り組みに活かされることもあるでしょう。個人の経験が資産化され、社会に広がっていく過程そのものが、新しい共助の仕組みだと思います。
こうして一人ひとりの声や知恵が「資産」となって蓄積されれば、介護という仕事は「やって終わり」ではなく、「続いて広がるもの」に変わります。それは、自分を守る力であると同時に、社会全体を豊かにする力でもあるのです。
私がawabotaで見つけた「仕組みづくりのヒント」
私が「経験を資産にする」という考え方に現実味を感じられたのは、awabotaに出会ってからでした。ここでは、ただ情報を学ぶのではなく、仲間と一緒に仕組みをつくることに重きが置かれています。
それまでの私は、介護の知識や体験を「現場だけで消えていくもの」と思っていました。しかしawabotaでは、メンバーが自分の経験を文章や動画にして発信し、仲間同士でフィードバックし合う光景が当たり前になっていました。そこにあったのは「発信できる人だけが強い世界」ではなく、小さな気づきや体験を積み上げて価値に変えていく世界でした。
特に印象的だったのは、「特別なスキルや資格がなくても始められる」という点です。介護の現場で積み重ねた知識を、難しい言葉ではなく日常の言葉で表現する。それを仲間とシェアして、改善し合い、社会につなげていく。こうした流れが仕組み化されていることで、一人では途中で諦めてしまいそうな挑戦も継続できるのです。
awabotaの中で学んだのは、**「仕組みがあるからこそ継続できる」**という実感でした。介護の現場にいると「頑張るのは自分しかいない」と思い込んでしまいがちです。けれど、仲間と共に仕組みを動かす中で、負担は分散され、発信は支えられ、成果は共有されます。私自身も、自分の声や経験を資産に変えていける実感を少しずつ持てるようになりました。
この経験は、**「介護を一人で抱える時代から、仕組みをつくって共に支える時代へ」**という可能性を強く意識させてくれました。そして、私が見つけたヒントは、介護だけでなく多くの分野に通じる「未来の働き方」につながっているのだと思います。
一人で終わらせない介護へ。未来への問いかけ
介護の現場にいると、「頑張るのは自分しかいない」と思い込んでしまうことが多々あります。夜勤明けの疲れ、利用者様やご家族からのプレッシャー、限られた人員で回さなければならない日々――気づけば、自分の体も心もすり減らしていく。そんな経験をしてきたからこそ、私は強く思います。
介護は一人で抱えるものではない。
制度や施設に頼るだけでは限界がある。けれど、だからといって一人で背負い込んでしまえば続けられなくなる。必要なのは、「個人の知恵や経験を社会とつなげて共有し、支え合える仕組み」を広げていくことです。
そして今は、そのための道が少しずつ見え始めています。経験を資産に変える発想、Web5がもたらす分散型のつながり、awabotaのように仲間と共に取り組める場。どれも「一人で終わらせない介護」を実現するためのヒントです。
私はここで、読んでくださっているあなたに問いかけたい。
あなたの現場の知識や経験は、誰かにとって救いになるかもしれません。
それを閉じ込めてしまいますか? それとも、社会に広げていきますか?
介護の未来は、私たち一人ひとりの小さな選択の積み重ねから変わっていくのだと思います。
最後に…
介護は一人で抱え込むものではなく、社会とつながり、知識を共有して支え合っていくものだと思います。現場で培った経験を「資産」として残すことは、自分を守る力になり、同時に誰かの助けにもなります。
制度や施設だけに頼るのではなく、私たち一人ひとりの声や工夫が重なってこそ、新しい介護の未来は形になります。
あなたの経験もまた、誰かの支えになるかもしれません。
その知恵を閉じ込めず、広げていく選択をしてみませんか?

