介護は施設や病院に任せれば安心――そう思われがちですが、現場で働いていると「制度や施設だけでは支えきれない現実」がはっきり見えてきます。高齢化のスピード、人材不足、家族への負担…。こうした課題は介護職だけでなく、社会全体が直面している問題です。
この記事では、介護を社会全体で支える必要性と、そこにWeb5の仕組みがどう活かせるのかを考えていきます。
制度や病院・施設だけでは支えきれない理由
介護というと「施設に入れば安心」「病院で診てもらえば大丈夫」と考える人も多いと思います。しかし実際には、制度や施設だけで高齢者や家族を支えきることはできません。私自身、現場で10年以上働いてきて、その限界を痛感する場面を数えきれないほど見てきました。
高齢化のスピードが制度を追い越している
日本は世界でもトップクラスの高齢化社会です。介護が必要な人は年々増えていますが、制度の整備や施設の数は追いついていません。特養ホームや老健施設の入所待機は数年に及ぶことも珍しくなく、「入りたくても入れない」状態が続きます。実際に私の現場でも、入所を希望していた利用者さんが待機の間に体調を崩し、結局家庭で家族が看取ることになったケースがありました。制度の遅れは、そのまま家庭の負担に直結してしまいます。
人材不足と働き手の限界
制度はあっても、そこで働く介護職員が不足しています。少ない人数で多くの利用者を支えるため、一人の職員にかかる負担は大きくなりがちです。夜勤では1人で30人近くを見ることもあり、ちょっとしたトラブルが起きただけで全体が回らなくなる。そんな現実の中で、制度だけでは支えきれないことを強く感じます。
家族にのしかかる負担
施設や病院に頼れないとき、最終的に大きな負担を抱えるのは家族です。日中も夜間も介護が必要で、睡眠不足になったり、仕事を辞めざるを得ない「介護離職」に追い込まれる人も少なくありません。現場で「もう限界です」と涙ながらに相談してくる家族の声を聞くたびに、制度の限界を痛感します。
個別のニーズに応えきれない制度の枠
介護を必要とする人の状態は十人十色です。歩行が難しい人、認知症の人、食事が取れない人――必要なケアはすべて違います。しかし制度や施設のサービスは「決められた枠組み」で提供されるため、細やかなニーズに応えるのは難しいのが現実です。
たとえば「毎日お風呂に入りたい」という希望があっても、入浴介助の回数や時間には制限がある。結果として、本人の望みに寄り添えない場面が生まれてしまうのです。
介護と社会全体のつながり
介護は、施設や病院だけの問題ではなく、社会全体の課題です。高齢化が加速する中で「介護は家庭の問題」「施設に任せれば解決する」という考え方ではもう立ち行かなくなっています。私自身、現場で家族や地域と関わる中で、社会全体での支え合いの必要性を強く感じるようになりました。
家族だけでは抱えきれない現実
介護の大部分は、今でも家庭に委ねられています。特に要介護度が軽い段階では「家族で何とかしてください」と言われることが多く、仕事と両立できずに介護離職に追い込まれる人もいます。現場でも「もう体力的にも精神的にも限界です」と訴える家族を何度も見てきました。制度や施設が限界を迎えると、そのしわ寄せは必ず家庭に戻ってくるのです。
地域での支え合いの重要性
そこで必要なのが「地域とのつながり」です。買い物や通院の付き添い、話し相手になるだけでも、介護する家族の負担は大きく軽減されます。地域包括支援センターや自治体のボランティア活動はありますが、まだまだ十分に機能していないのが現状です。地域で自然に支え合える仕組みが根づけば、介護を「家庭か施設か」だけに押し込めずに済むはずです。
介護は社会全体の課題
介護は「家族の問題」でも「一部の職業の問題」でもなく、社会全体で向き合うべきテーマです。高齢者の生活を守ることは、そのまま未来の自分たちの生活を守ることにつながります。だからこそ「社会全体で支える介護」という意識を持ち、仕組みをつくっていくことが不可欠です。
現場で閉じ込められている「知恵と経験」
介護の現場には、マニュアルだけでは学べない細かな知恵や経験がたくさんあります。夜勤中の巡回をどう効率よく回すか、認知症の方が落ち着ける声かけの順番、家族が安心できる説明の工夫――こうした一つひとつの工夫は、利用者や家族の生活を支える大事な知恵です。
しかし、その知恵や経験は 施設内や病院内に閉じ込められてしまう のが現状です。新人が入ってきても、結局「一から自分で経験しないとわからない」状態になり、同じ失敗や遠回りが繰り返されてしまいます。別の施設や地域に行けば、全く同じ工夫がゼロからやり直されている――これほどもったいないことはありません。
マニュアルに載らない「現場のリアル」
介護の知恵の多くは、教科書やマニュアルには載っていません。
「どうすれば声をかけたら利用者さんが安心できるのか」
「体を痛めずに移乗をサポートできる抱え方」
「夜勤で30人を1人で見るときの巡回の工夫」
こうした知識は、実際に現場に立ち、体験しなければ得られないものです。にもかかわらず、その学びは個人の中で終わってしまうことが多いのです。
施設ごとに閉じられてしまう情報
現場で積み重ねた知識や経験は、施設や病院ごとに閉じられてしまいます。例えばA施設で見つかった「夜間対応のコツ」は、B施設では共有されず、また同じ苦労を繰り返す。家庭介護者にとって役立つ知識があっても、外には伝わらない。結果として、社会全体では知識が広がらず、介護はいつまでも効率化されません。
家族に届かない「助かるはずの知識」
家族介護をしている人にとっても同じです。現場でのノウハウが家庭に届けば、介護はもっと楽になるはずなのに、多くの場合は情報が共有されません。結果として、家族は一人で悩み、無理をして、限界に追い込まれてしまいます。これは制度や施設の限界だけでなく、「知識の循環がない」という社会的な問題でもあります。
共有されれば社会の力になる
もし現場で生まれた知恵や経験が、オープンに共有され、社会全体で活用できるようになればどうでしょうか。新人職員は早く現場に慣れ、家族は安心して介護を続けられる。地域の支援者も効果的に動ける。
つまり、現場で閉じ込められている知識を「共有できる仕組み」に変えることこそが、介護を持続可能にするための大きな一歩なのです。
Web5が開く分散型の支え合い
これまで介護の知恵や経験は、施設や家庭の中で閉じ込められてきました。その結果、同じ工夫や苦労が繰り返され、社会全体での解決につながらないという限界がありました。ここで新しい可能性を広げてくれるのが、Web5の分散型の仕組みです。
中央集権型では限界がある
現在の介護制度やサービスは「中央集権型」です。
つまり、制度や報酬は国や自治体、施設が一括で決め、それを現場が従う形です。
例えば「入浴は週に2回まで」「夜勤体制は1人で30人まで」など、全国一律のルールが現場を縛ります。その中で生まれる小さな工夫や知恵は評価されにくく、現場で完結してしまう。これでは「知識が広がらないまま疲弊が続く」という悪循環から抜け出せません。
分散型でつながる仕組み
Web5の特徴は、分散型のネットワークです。
これは「中央のルールに依存せず、個人同士が直接つながり合える」仕組みを意味します。
例えば、ある施設の職員が「夜勤を少しでも楽にする方法」を共有すれば、別の地域の職員や家族介護者がすぐにアクセスできる。個人の経験や知識が「施設内に閉じ込められる」ことなく、社会全体で流通します。
つまり、中央に頼らなくても、現場から発信された知恵が社会を動かす力を持つのです。
介護者と社会を直接結ぶ
分散型の仕組みは、介護職員だけではなく、家族や地域の人も参加できます。
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家族介護をしている人が実践した「転倒防止の工夫」
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地域ボランティアが試して効果のあった「声かけの習慣」
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介護士が経験から得た「夜勤巡回の方法」
これらは小さな知恵ですが、社会全体で共有すれば、どこかで誰かの支えになる知識に変わります。一人の知恵が、直接社会全体につながるのがWeb5的な強みです。
一人の知恵が全体の財産になる
介護の知識は、現場だけでなく社会全体の財産になり得ます。Web5の分散型仕組みを使えば、情報は閉じ込められず循環します。
例えば「認知症の方が安心できる声かけ」が共有されれば、別の家庭介護者が救われる。ある施設での「体を痛めない移乗の工夫」が公開されれば、他の介護士の腰痛を防ぐ。
このように、一人の知恵が全体の役に立つ循環を生み出せるのです。

